そして、すべての道はローマに通ず──
人生の資産形成における“現代版ローマ帝国のつくり方”
人は何かを積み上げようとするとき、つい「一気に完成させたい」という欲望に駆られがちだ。
資産形成でも、キャリアでも、住環境でも、何か大きな成果を一足飛びに手に入れたくなる。
だが現実は残酷なほど正直で、どの分野でも“近道のように見える道”ほど落とし穴が深い。
逆に、地味で、平凡で、地道な積み上げこそが時間をかけて驚くほど強固な基盤を作っていく。
この構造は、まるで古代ローマの都市づくりそのものだ。
ローマ帝国は、一夜にして巨大になったわけではない。
小さな道路、小さな水道、小さな城壁、小さな市場、それらをひとつずつ積み上げ、
「生活を安定させる装置」を整え続けて帝国は肥大化した。
どれも派手ではない。
だが、揺るぎない。
そして何より重要なのは、ローマが積み上げてきた道やインフラが“どの地域に行っても使える普遍性”を持っていたことだ。
それはまさに、「すべての道はローマに通ず」という言葉に象徴される。
現代に生きる私たちも、この「ローマの思想」の恩恵を受けながら生きている。そして、自分自身の人生においても、ローマ帝国のような“揺るぎない中心”を作ることは驚くほど大きな意味を持つ。
■ 現代における「ローマ」とは何か
私自身にとってのローマとは、圧倒的に安定し、揺らぎにくく、そしていつでも帰ることのできる「拠点」である。
それは都市かもしれない。
国かもしれない。
あるいは、生活の仕組みそのものかもしれない。
いまの私にとってのローマは、迷いなく「シンガポール」である。
治安、税制、インフラ、医療、教育、国の体質、すべてが“合理的に機能した都市国家”。
不安要素が極めて少なく、人生の土台を作るにはこれ以上ない場所だ。
シンガポールに根を下ろすという選択は、私が人生の大半を投じて構築してきた“生活のインフラ”がすべて噛み合う場所をようやく見つけたという実感に近い。
■ 「ローマは一日にして成らず」──積み上げこそが最強の戦略
資産形成においても、人生設計においても、本質はローマと同じである。
大きな一発逆転は必要ない。
むしろ危険ですらある。
必要なのは、
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良質な資産を一つずつ積み上げること
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少しずつ安定収入の柱を増やすこと
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余剰を確保し、焦らず複利に委ねること
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継続可能で、壊れにくい仕組みを作ること
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無理をしないこと
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「負けない構造」を重視すること
これらをゆっくりと積み上げる。
それだけで、数年、数十年という時間は驚くほどの結果をもたらしてくれる。
現代では情報が多すぎて、人はつい“早く大きく稼ぎたい罠”に引きずり込まれる。
だが、巨大な城は急いで作ると崩れる。無理に高い塔を立てようとすると、基礎が持たない。
“無理せず積み上げる”という選択は、実はもっとも高効果・低リスクの戦略なのだ。
■ 「すべての道はローマに通ず」──積み上げは自由を生む
ローマの道路網があらゆる地域とつながり、巨大な帝国の統治を可能にしたように、
人生で積み上げたものは必ず後で“自由度”として返ってくる。
たとえば私は、シンガポールを主軸にしながらも、次のような“サブルート”を常に持つようにしている。
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万一のときの住み替え先としてのマレーシア、ドバイ、ポルトガルの選択肢
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海外に一時的に滞在したくなった時の選択肢
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将来子どもが欧州で学びたくなった場合の道
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時期が来れば半年未満の海外滞在を自由に選べる設計
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都市レベルで「ここなら住める」という候補地を複数持つ
これらはすべて、私が積み上げてきた“ローマ”という中心があるから成立する。
中心が弱ければ、道を増やすほど不安定になる。
だが中心が強ければ、道を増やすほど自由が増す。
■ ローマという中心があると、判断の質が上がる
「迷ったら戻る場所がある」
この感覚は人生の安心感を劇的に高める。
何かを決めるときでも、
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成功してもローマに戻れる
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失敗してもローマに戻れる
という“精神的な保険”があると、判断の軸がぶれない。
すると自然と、
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安全に見えるのに
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実は高効率な選択
ができるようになる。
これが、ローマ型の中心を持つことの最も大きな価値のように思う。
■ 私にとってのローマ:
「揺らがない中心を作る」という生き方
ローマの思想を現代に置き換えるなら、私はこう考える。
人生の中心(ローマ)を強固にし、
その中心から世界へ通じる“複数の道”を確保しておく。
この仕組みを作るために必要なのは、巨大なリスクを取ることでも、一気に資産を膨らませることでもない。
ただ、
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自分にとって最適な環境に住む
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日々の生活コストを抑えつつ質を高める
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安定し続ける資産を積み上げる
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無理のないレバレッジを使う
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家族の幸福を優先する
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次善策・第三策を常に用意しておく
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どこへ行っても適応できる流動性を確保する
これだけでいい。
ローマ帝国の基盤が、小さな石を積んだ結果だったように、人生の資産形成もまた、小さな“質の高い選択”の積み重ね以外の何物でもない。
■ ローマは一日にして成らず。
だが、あなたの歩く道はすべてローマに通じていく
私は焦らない。
急がない。
無理をしない。
だが、歩みを止めることもない。
この“ゆっくりだが確実な積み上げ”によって、いつの間にか巨大な安心と自由を手に入れている。
ローマを築くとは、自分にとっての“揺るぎない中心”を長い時間をかけて作ること。
そしてその中心を作りさえすれば、どの方向へ進んでも、どんな未来を選んでも、人生の道筋は自然とローマへと通じていく。
ローマは一日にして成らず。
そして、すべての道はローマに通ず。
この二つの言葉の間にある“時間の厚み”こそが、私が今後も大切にしたい資産形成の哲学である。